Tired of ads? Upgrade to paid account and never see ads again!
N3437BM-39
rsfsaxc
04:贈り物

僕はベルルの誕生日に贈る、ロケットペンダントを買いに、王都で人気のジュエリーショップへやってきた。

以前指輪を買いにきた店だが、あの時より自分の心持ちが落ち着いているのは何故だろう。
単純にこういった店に入り慣れたのか、今回は目的がはっきりしているからか、ベルルに何か贈る楽しみの方が大きいからか。

「ようこそジュエリー・ハイクオールへ。どういったものをお探しでしょうか?」

上品な装いの女性店員が、カウンターの所で僕に案内をしてくれる。

「その、ロケットペンダントを扱っているだろうか」

「ええ勿論です。ハイクオールのロケットペンダントは王族や貴族の方にもご贔屓にされている逸品ぞろいでして……。少々お待ちください」

女性はにこやかに席を立ち、大きなガラスのケースを持って来た。
その中には、金細工ポロシャツ メンズ
メンズ ポロシャツ
ralph lauren rugby
や銀細工の、様々な大きさや形をしたロケットペンダントが固定して飾られている。

「こちらが我がハイクオールで人気のロケットペンダントとなっております。女性へのプレンゼントでしたら、こちらのハート形のペンダントが一番人気でございますが。金細工の……そうですね、大きさで言えば中程というところでしょうか」

「……はあ、なるほど」

ハートの形は確かに女性に人気で、ベルルにだって良く似合う可愛らしいものであった。
ただどこか無難で、いかにも大量生産大量消費を目的につくられたものの様な気がして、誕生日の贈り物として奮発したいと言うものとしては、少々お手頃すぎるかと思った。

「こちらはどうでしょう。楕円の最新流行のデザインになります。シンプルな作りで、サファイヤとルビーが施されております」

「ほお。最先端だな」

確かにとても魅力的な、銀細工のクールなデザインであったが、ベルルにはかなり大人っぽすぎる。
個人的に嫌いではないが、彼女にはもう少し柔らかいイメージのものが合うだろうな。

「でしたら、こちらはいかがでしょう。丸い単純な形ではございますが、表面を覆う様に石を組み込んでおりまして……ムーンオパールという石なのですが……」

「………」

ゆっくりと、僕は瞳を輝かせた。そのクリーム色の石を前に。
淡い色の金細工の、コイン大のロケットである。形は単純に乱れない丸であり、表面はつるんとしたムーンオパールが覆っている。

これだ……と一瞬でピンと来た。
ムーンオパールの滑らかな色合いは、ベルルにとても似合うと思える。

「これは良い。うん、これにしよう」

僕は少々浮かれて、店員にそれを頂こうと言った。
女性店員はニコリと満足げに笑った。






ベルルの誕生日だった。
僕はこの日、午前だけ仕事を入れ、午後は休みを貰っていた。その分本来休日であるはずの日に薬品の見張り当番を多く入れ、来月の新婚旅行の為の日程も開けておいた。

仕事をするのは苦ではない。楽しみがあればこそ。

僕は朝早くから仕事に出て、ランチタイムには王宮を飛び出していた。
数日前に買ったロケットペンダントは、既に内ポケットに忍び込ませている。それなりに良いお値段であったが、僕自身が気に入ってしまったので仕方が無い。

ハーガスに頼んで、花屋に寄ってもらった。
うちの中庭にも多くの花が植えられているが、女性に贈る花束の中にある花とは系統が違う。

普通なら赤い薔薇の花束が、一般的に女性に贈る花と言われている様だが、僕は赤い薔薇の花束を持っているタイプの男でもないし、ベルルも赤い薔薇を喜ぶ女性ではない。いや喜ぶかもしれないが、何か噛み合ない。

「どういったものをご要望で?」

花屋の主人が聞いてきた。

「妻の誕生日なのだが、出来るだけ優しい色合いの花束を作ってくれないか。黄色や、白や、桃色なんかの……」

「かしこまりましたです」

主人はさっそく、段々に積み上げられたバケツの中から、大きな黄色い薔薇や小降りの白い花、オレンジ色の鞠のような花などを選んで、大きな花束を作っていく。
やはり花屋の花は傷や虫食いが全く無く、美しいものだなと、庭を持つ者なりに関心したものだ。


出来上がった花束は、それはもう美しい優しいものであった。
ベルルをイメージ出来る、とてもしっくりくるものだ。






「ケーキはサフラナが作っているだろう……料理もサフラナが張り切っていたし……はあ、誕生日かあ。他に何が必要だろうか」

僕は馬車の中で、一人呟いていた。
贈り物と花束、それくらいしか思いつかなかった。

もっと沢山沢山、彼女を祝ってあげたいと言う思いだけは、誰にも負けない程あると言うのに、その幅が狭い事が問題である。
きっとジェラルならオリヴィアを喜ばせる為に、あらゆる手を考える前々から計画しておくのだろう。その資金力も相まって。

どうしようかと迷ったあげく、僕は魔法道具店に向かった。
彼女は僕の杖で良いと言っていたから、それならば他に何か、魔法を使う際役立つアイテムを贈ろうと思ったのだ。

「あら、グラシスの旦那様。お久しぶりだこと」

魔法工房メゾノアは、商店街から少し離れた人通りの少ない場所にある。暗い雰囲気のある店だが、父の代から魔法道具を揃える際、お世話になっている店だった。

今の店主は中年のけばけばしい女性サリア・メゾノアである。
サリアはカウンターでパイプを吹かしていた。

「何をお求めで?」

「……その、何と決まっている訳ではないのだが、妻が魔法を勉強する際、杖以外に何か持っていた方が良いアイテムがあるだろうかと……」

「あーら、グラシスの旦那様、ご結婚したと言う噂は本当だったのね。それにしても魔法の名家であるグラシス家の花嫁が、今から魔法をお勉強するなんて妙な話ですこと。おほほほ、嫌味ではございませんのよ」

「………」

サリアは「そうねえ」と意味深に笑って立ち上がり、タバコを灰皿に押し付けた。

「魔法を始める初等部の親御さんなんかは、良く“ワッペン”を買って行くわね。自分の魔法があらぬ方向へ発動しそうになったとき、それを強制的に中断させる術式がかいてあるものね。あなたはそんなもの、使う事が無かったかもしれないけれど」

「……ああ、そう言うのを身につけている学生が居たな」

確かに僕は、幼い頃から魔法の中で生きて来たので、そのようなものが無くても魔法を中断させる感覚は自ずとついていた。
ただいきなり魔法学校へ通う者なんかは、“ワッペン”というものを身につけていたっけ。

贈り物などにはならないかもしれないけれど、ベルルには用意しておいた方が良いかもしれない。

「一つくれ。出来るだけ、上等なものを」

「お色はどうする?」

「うーん、黄色があれば」

黄色い糸で術式が縫い込まれた、手のひらサイズのワッペン。
衣服に縫い込んでも良いし、持ち物に挟んでいても良い。

僕はそれを一つ買って、結局この店を出た。





「はあ、これはプレゼントと言う感じではないな。……他に何か、ベルルに贈り物としてふさわしいものは無いだろうか」

僕が再び馬車に乗り込み、そう言って腕を組んで考え込んでいたとき、ふとハーガスが小窓からちらりと僕を見た。

「ん? どうしたハーガス。道の真ん中に酔っぱらいでも寝ているか?」

「………いいえ、旦那様」

ハーガスは白髪混じりの髭をもぞもぞ動かし、小さな声でこう言った。

「そんなに贈り物に悩まなくとも、奥様は何だって喜びますよ……。もう十分ですよ」

「………」

ハーガスが珍しく話しかけてきたので、僕は少々びっくりしてしまって、ぽかんとする。空いた口が塞がらなかった。

「奥様には旦那様が側に居る事こそが、一番嬉しい事なのです。旦那様に、奥様が居ればそれで幸せな様に……」

「………ハ」

ハーガスウウウウウウウ!!!
僕は思わずウルッとしてしまった。ベルルの誕生日の日にハーガスに泣かされるとは思っていなかった。

「差し出がましい事を言って申し訳ございません……」

「い、いや……いやお前の言う通りだ。贈り物は数ではないな。僕はベルルに自分の誕生日を、最高に嬉しいと思って欲しかったんだ。……だけど、後は僕次第だ。そうだな……もう、館に戻ろう」

「………かしこまりました、旦那様」

ハーガスは鞭を振った。
馬車は王都を抜け、緑色の草原に出る。


流石に無口なハーガスであるが、僕を小さい頃から面倒見てくれた優しい使用人だ。
サフラナと違って僕にガミガミ何かを言う事は無いが、こうやって悩んでドツボにはまっている時こそ、ボソッと助言してくれる。

そうだな。こうやって悩んだ所で、プレゼントは既に決まっているのだ。
後は、一刻も早く館に戻って、ベルルと共に過ごし、彼女の誕生日を楽しいものにしなければならない。

こんな日こそ、ベルルの側に居て、彼女のお願いを沢山聞いてあげよう。
彼女はもの以上に、そういった交流を喜ぶ。


幸いにも、この日はとても明るく温かい日和だ。
アーモンドの花が咲き誇る並木道を通り、馬車は丘をのぼっていく。
すると小高い丘の上に、ポツンと屋敷が見え始める。グラシス家の屋敷だ。


ベルルは今日初めて、グラシスの館で、誕生日を迎えるのだ。
彼女は17歳になる。


N2229BM-14
rsfsaxc
残念な銃職人(ガンスミス)

 整備工場から歩くこと10分。タクムとアイの一人一台(ふたり)は、ワンダーから聞いた住所へとたどり着く。

「…………で、ここか?」
『うん、ここだよ……?』
「なんていうか……」
『うん……』

 ――<ドリーム・ガン>。

『「さすが兄弟だな(ね)……」』
 でかでかと掲げられた紫色の看板を見上げ、口を揃えた。

 ワンダーにドリーム。彼らの親は子供の名前をつける時、一体、何を考えたのだろう。あまりにも壮大すぎる彼らの名前に戦慄するタクム。

「おう、なんだ、小僧! 俺の工房に何のようだ!?」
 呆然と立ち竦む彼に、声をかける人物がいた。振り返ればダンボール――もとい、大量のダンボール箱を抱えた銃職人ドリーム氏が立っていた。

 退いた退いたとタクムを押しのけ、工房へと入っていくドリーム。十五畳ほどの空間。部屋の真ラグビー ラルフ
ラルフ シャツ
ファッション メンズ ブランド
ん中に大きな作業台、用途別、三台の作業機械が右壁を塞ぎ、数え切れないほどの銃部品を抱えた棚が左壁を覆っている。

「なにやってんだ、小僧! さっさと入れ!」
 狭い。かなりの狭さ。この場でちょっと小粋なステップでも刻もうものなら崩落する危険すらあった。もちろん刻むつもりはないが。

 ダンボール箱を部屋の隅に置き、声を張り上げる銃職人。鋭い瞳に鷲のような鼻、深い皺の刻まれた強面フェイス。

「えっと、これ……」
「なに、兄貴(ワンダー)の紹介!? いらっしゃい! 歓迎するぞ!!」
 タクムが紹介状を渡すと、小さなメモ用紙を引っ手繰ってからドリームが言う。

「で、なんだ小僧! まあ、座れ!!」
 強面ではあるが、兄同様、悪い人ではないのだろう。が、いかんせん声が大き過ぎる。そして甲高い。こんな狭い部屋で怒鳴り散らさなくても聞こえている。まるで脅されているかのようだ。

『今日は銃の整備を頼みに来たんです』
「はっ!? てめぇはてめぇの鉄砲も管理できねえのか!?」
 全く嘆かわしい、兄と同じリアクションを返す弟。実に兄弟である。

「中古なので状態も悪くなってきていたので、一度、専門家に診てもらおうと思いまして」
「いい心がけじゃねえか! おら、寄越しな、どの銃だ!?」
 タクムは肩掛けにしていたブローニングM1918を渡した。

「BARか。弾が少ねえし、重いし、銃身が加熱しても交換できねえ。俺は好きじゃねえ! お前さんはこれを狙撃銃にしたんだな」
 高精度のスコープを見たからか、ドリームが尋ねてくる。
「はい」
「ばっきゃろう! こんなんなるまで放っておきやがって! 銃身がいかれちまってんじゃねえか! こんなんじゃ当たるもんも当たんねぇじゃねえか!」
 ドリーム曰く、銃身が少し曲がっているそうで、かなり危ない状態のようだ。

 つい先日まで状態が『良好』であったこと、たった一度の戦闘使用――わずか50発程度の実射でこのような結果になったことを告げる。

 するとドリームははっとなり、銃身を指で叩いた。

「確かに、これじゃあな……銃身に使われてる金属だが、こりゃ粗悪品だな。交換しなけりゃ使いもんにならん。とりあえず、これは分解し(ひらい)て診るしかねえな! ちょっと待ってな」
 ドリームは言いながら、ブローニングM1918を解体し、銃身はもとより、その他の部品をひとつひとつ、確認する。

「こりゃひでえ。どこのメーカーが作ったのか分からんが、パーツの半分は粗悪品だ」
 苦虫を噛み潰したようにドリームが言う。

 恐らくは盗賊の持っていた品だからであろう。街に入れない彼らは、普通のガンショップから銃器を購入することは出来ない。個別に商人と契約するか、何らかの伝手を使って手に入れていたのであろう。その際、不良品を掴まされたというわけだ。

「ほらよ、これで大分マトモになった。多少手を加えておいたから、ちったぁ、マシになるはずだ」

-------------------
名称:ブローニングM1918+4
種別:バトルライフル
弾薬:.30-06スプリングフィールド弾(20/20)
状態:最高
性能
殺傷力:D+
貫通:D↑1
打撃:C+
熱量:-
精度:C+↑4
連射:600/min↑250
整備:C
射程:550m↑250
製作:ドリーム・ランド
-------------------

『すごい……」
「ああ、元の状態より良くなってるな」
『いや、そうじゃなくて名前……」
「……ブッ!!」
『……兄はワンダー・ランド』
「ブヒュ……ッ!?」
『……弟はディズエー・ランド』
「いや、さすがにそれはないだろ」
『ノッてよ!?』
 アイが嘆いた。

「で、お前さん達、何を笑ってる!」
「いや、何でもありません」
『うん、名前がテーマパークだなんて思ってないよ!?』
「ちょ、おまwwww」
「テーマパーク? なんだそれは……」
『そこは知っててよ!?』
 アイが再び呻く。生存競争の厳しいこの世界には遊戯に力を割いている余力はないようだ。

「まあ、いい。ところでお前さんも苦労しただろう、あんな粗悪品じゃまともに当てることも出来んな」
「いや、そこそこは当たりましたけど……」
『うん、300メートル級のスコアだけど見る?』
 観測手として先日の狩りのスコアを携帯の画面に表示する。

「お前さん、天才か!?」
『そうだよ、タクムは既に狙撃の天才』
「おいおい、ちょっと褒めすぎ」
 狙撃手、拳銃使いであるタクムのDEXは技能レベルによるボーナスを合わせると6.00以上あった。これは旅団(2000~5000名の部隊単位)の中でもトップの実力を持つという意味である。

 2000人あるいは5000人に1人の実力者ともなれば十分に天才(エース)の領域であろう。狙撃の腕を買われて特殊部隊にスカウトされるような専門家(スペシャリスト)といえば分かり易いかもしれない。

 弘法筆を選ばずではないが、タクムはその高いステータス値にものを言わせて、狙撃を成功させていたというわけである。

「このスコアは本当か!?」
『うん。しかも実戦データだよ』
「……ついて来い」
 ドリームは立ち上がり、工房の裏手から地下にあるという試射場へと二人を招いた。

「おぉ……」
『凄いね、これは』

 試射場はかなり本格的なものだった。全面をコンクリート造りで、試射台から奥の壁までの距離は500メートルはあるだろう。

「これを使ってみてくれ」

-------------------
名称:デイドリーム
種別:対生体兵器ライフル
弾薬:.338 ラプアマグナム弾(20/20)
状態:最高
性能
殺傷力:C-
貫通:D+
打撃:C
熱量:-
精度:A-
連射:240/min
整備:E
射程:1500m
製作:ドリーム・ランド

前線都市<ガンマ>の甲種銃職人ドリーム ランドが設計・開発したライフル銃。
コンセプトは<対生体兵器専用ライフル>で、硬い装甲を持ち、強い生命力を持つ生体兵器を確実に戦闘不能にするため、対物ライフルなどに使用される.338 ラプアマグナム弾が採用されている。
そのため一般的なライフル弾である5.56mm×45の約3倍、7.62ミリ×51の約2倍という高火力を実現している。

また近接戦闘時の取り回しに考慮し、銃床はスライド式で調節可能であり、生体兵器の部品の利用によって5.2キログラムという携行性と耐久性を両立している。

命中精度に優れた.338 ラプアマグナム弾を使用しているため、命中精度は高く、有効射程は1500メートルにも及ぶ。また専用の消音器も開発されているため、スナイパーライフルとしての性能も確保されている。

いいこと尽くめのように聞こえるが、.338 ラプアマグナム弾を使用する関係で、反動はとても強烈で、よほどの優れた使い手でもない限り、使いこなすことはまず不可能という気難しい銃器である。

発射方式はセミオート/3バースト/フルオートの3タイプ。
また予備マガジンも20発/50発/120発の3タイプがそれぞれ存在する。

販売価格:25,000
-------------------

『すごい……』
「なんだ、この高性能っぷりは……」
『いや、名前……白昼夢(デイドリーム)だって』
「ブッ!!」
「うるせえ! いいんだよ、こりゃ俺の妄想みてぇな銃だからな! いいから黙って使ってみろ!!」
 真っ赤になったドリームが試射場の隅にある端末を操作する。

 真正面、100メートルほど先にある人型の的が立ち上がった。

「いいか、セミオートで撃て。一発だけ、一発だけだ。間違ってもフルオートなんかで撃つんじゃねえぞ! こいつぁ、相当なじゃじゃ馬だ!!」「あれか、押すなよ的なあれか!?」
「マジだ、本当に危ねんだ!」
 タクムはスライド式の銃床を合わせると肩に当てる。セレクトレバーをひとつ上げ、<SEMI>に設定する。

 この距離ならスコープを使うまでもない。弾道予測線を的のど真ん中に合わせて引き金を弾いた。

 ブローニングM1918とは比べ物にならないほどのマズルフラッシュが目の前を覆った。火薬の爆ぜる爆発音も比較にならない。

 それよりも、

「――……ぐッ!!」
『マスター!!』

 タクムが気がついた時には地面に倒れていた。銃口は天井に向けたまま、視線の端で顔を真っ赤にしたドリームが「引き金から指外せ!」と怒鳴った。
 タクムはすぐさま引き金から指を離し、セーフティロックをかける。

『大丈夫、マスター……』
「ああ、大丈夫だ。けど、なんだ、今の……」
「あはは、あははは!! やっぱり、お前さんでもそうなるか!?」
 ドリームが腹を抱えて笑い出す。

『ドリーム、一体、どういうこと!? さっきの暴発でしょう!? そんな危険な銃を渡すなんて!!』
「馬鹿にすんな! 暴発なんざしちゃいねえ……ほら的のほうを見てみろ!」
 タクムは起き上がり、先ほど狙った的を見た。

 銃弾は人型の的の眉間部分を貫いていた。胸のど真ん中に照準は合わせていたはずだが、反動を抑え切れなかったのか、狙いがズレたようだ。

「ほかの……例えば並みのライフル弾なら弾丸自体の威力が低いからこんな反動はまず起きねえ! 逆に、対物ライフルや重機銃あたりなら銃身の長さや銃自体の重みで多少反動は抑えられる。けどな、こいつにはそれがねえ。弾丸は対物並み、重量や長さは小銃並み、こんなもんを扱えるなんて相当の使い手か、怪力の持ち主しかいねえんだよ!」
「なんだよ、この欠陥銃」
「言ったろ、じゃじゃ馬だってよ! そうか、やっぱりお前さんでも扱い切れんかったか、あははははッ!!」
 罵られて逆上するどころか、むしろ誇らしげな笑い声を上げるドリーム。

「……やってやるッ」
 タクムは起き上がると、立ち上がったままの的に銃口を向けた。

 セレクトレバーを<AUTO>に変更し、デイドリームを腰だめに構える。

「お、おい、ちょっと待て!! それは――」
「うるせえ!! なめんじゃねえ!!」

 ――|タクムが引き金を弾くと、瞬時に的は砕け散る(ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ)――

「どーだ、見たか!!」
 20発の弾装を使い果たし、タクムは快哉を上げた。

 100メートル先、ベニア製の的は僅かな下半身部分だけを残して無残に引き千切られていた。<デイドリーム>の命中精度はA-。反動さえ抑え付けることが出来れば集弾性能はその他の重機銃や自動小銃を上回る。

『さすがマスター! やるぅ!!』
「お前……何もんだ……おらぁ……白昼夢でも見てんのか……?」
 ドリームが両目を擦り、再び的を確認する。

 反動の大きな銃を押さえつける方法は二つ、銃自体に反動を押さえ込むシステムを組み込むか、圧倒的な力でもって黙らせるかだ。
 タクムのステータスはDEXのみならず、軒並み上昇している。STRは3.50を超えている。4.00が大隊(500名程度)のトップ、3.00が中隊(100名)のエースという評価であることを思えばタクムの力は300人に一人いるかいないかの怪力の持ち主だ。
 ついでに衝撃に対する耐性を現すVITも3.00と、これまた高い数値を示している。

 つまり今のタクムは、身長2メートル、体重100キロを超えるようなゴリマッチョな黒人兵士と同等かそれ以上と考えればその膂力を持ち、1000メートル級の狙撃を易々とこなす、いわば銃のプロフェッショナル。プロ中のプロである。

 彼に使いこなせない銃は、もはや人間には使えないと思ってもらって差支えない。

「コイツは確かにじゃじゃ馬だけど、むしろこれくらいの馬力がないと不安だよな。なあ、これ幾らだ? 欲しいんだが……」
「なんっ、だとぅ……ッ!」
 ドリームは膝を付き、悔しげに顔を歪ませる。

「持っていけ、金なんぞいらん! タダでいい! 代わりに俺以外に診せることは絶対に許さん……整備の時には必ず、俺のところに持って来い……」

「え、いいの?」
『軍トライアルに落ちた腹いせに、適当な新人捕まえて驚かせようって思ってたんでしょ? 大方、あっさりとそれを使いこなされちゃったから、バレる前に恩に着せちゃえって魂胆じゃない?』
「なぜそれを!? まさか、お前! 心を読んだな!?」
「……兄弟だな」
『……悲しいくらいにね』
「くッ……、そんな目で見るなぁぁぁ!!」
 タクムの残念なものを見る視線に耐えられず、ドリームは試射場から逃げ出す。

 さすがに追いかけるのは可哀想だと自重し、作業台に「面白い銃が出来たら教えてくれ」という書置きだけを残して、タクムは工房<ドリーム・ガン>を出るのだった。


N0771E-25
rsfsaxc
第一部 4.復讐のとき−4

 階段を上がっていく王を見送り、サンジェルマンは大広間には戻らずに館の外へ出た。日は弱くなり始めていたが、まだ外は明るい。サンジェルマンは館の周囲に異状がないかと目を配りながら、館の周りをゆっくりと歩いていった。外で護衛を担当する近衛兵たちが彼に気づき、次々に敬礼する。
 近衛兵は二人で一組となって場を担当する決まりになっているが、サンジェルマンは庭を一人で歩いている近衛兵を見つけた。その若い近衛兵は退屈そうに地面を蹴りながら、のろのろと移動している。
「そこの近衛兵!」
 サンジェルマンに呼び止められた近衛兵は、あまりにも驚いた様子で立ち止まった。単独行動を不審に思ったサンジェルマンにその理由を問われると、その近衛兵は気まずそうに顔を曇らせる。
「その、実はですね、相棒が急に腹の調子が悪いと言って持ち場を去りまして。ちょうど今、館内で介抱されているところなのです。あの、すぐ戻ってくると思っていたら、なかなか戻ってこなくて、僕も困っているわけでして……」
「それで一人でいるわけか。本来なら一人での任務は禁じられているはずだが。副隊長にはもう知らせたのか?」
「あ、いえ、まだですが……」
 若い近衛兵の声がだんだんと小さくなっていく。サンジェルマンは身を小さくする彼を見て、息をついた。バーバリー レディース
バーバリー 手袋
バーバリー ダウン

「君の持ち場はどこだ? いかにここが安全地帯とはいえ、油断は常に禁物だ。その者が戻らぬというなら、担当場所を別に変えてもらえるように計らってもらえ」
 サンジェルマンがそう言うと、その近衛兵は意外そうに彼を見た。そして、安心したように微笑み、はい、と返事をした。

 館の周りを一周し、サンジェルマンは玄関を再びくぐった。外の太陽の明るさに慣れた目が、室内の薄暗さに慣れるまでに少し時間がかかる。大広間の方から、騒がしいほどでもないが複数の人々の話し声が聞こえてきた。
 サンジェルマンは大広間へ戻ろうとして、ふと、それとは逆方向の、開きっ放しになった部屋の扉に目を留めた。隣も向かいの部屋の扉もきちんと閉まっているのに、そこだけが半分ほど開き、室内からの光が廊下に細長く伸びている。
 彼は部屋に近づくと、条件反射で剣に手をやり、その扉から室内にそっと入った。そこは、それほど広くはない遊戯室で、室内にひと気はなかった。二つの窓も開いていて、そこから差し入る日光が床の敷物の赤い色を鮮やかに浮き立たせている。中央の一人掛け椅子が斜めに動かされており、その脚に引きずられ、下にある敷物には大きな皺が寄っていた。
「誰もいないのか。召使の誰かが掃除をしようとして、他の用事ができて慌てて出て行ったか」
 サンジェルマンは部屋の中央に寄っていき、椅子を元の位置に動かそうとして、はっとして足を止めた。彼は思わず、部屋を注意深く見回した。
 壁面に飾られた数々の剣の並びで、右端から五本目の部分に空間ができている。一本の剣が忽然とそこから消えていたのだ。
 彼はもう一度、剣を探して部屋をぐるりと見回した。しかし、それらしき剣は見当たらない。
 彼は再び、はっと息を飲んだ。ジェニーの顔が頭にふって湧いてくる。
 彼らが狩りで留守の間、ジェニーはこの館にいて部屋を自由に行き来できたはずだ。しかも、彼女は剣を扱う。戦地から王城へ連行される途中、「必要なものは?」とサンジェルマンに問われ、ジェニーは、王の命を、と彼に答えていたではないか。
 次に、サンジェルマンの頭にゴーティス王の姿が映った。王はジェニーのいる部屋へ向かったはずだ。 
「だが、いや、まさか……」
 サンジェルマンは戸惑い、部屋から出ようとした。混乱の酷さからか、脚がからまってうまく歩けない。頭まで朦朧となってきている。胸に急について出た不安のせいか、何だか、考えがうまくまとまらない。
 彼が扉に体を預けて息を整えようとしていると、その目前の廊下を、血相を変えた召使の女が一目散に疾走していった。
「……まさか!」
 急に足から力が萎え、サンジェルマンは扉を下に滑り落ちるようにして床に腰を落とした。立ち上がろうと試みるが、なぜか足に力が入らない。
 サンジェルマンの目に、大広間の入口から何人かの近衛兵が飛び出していく姿が見えた。さっきよりも大広間の方が騒がしくなっており、女の悲鳴に似た声まで聞こえる。下腹が急に重くなり、彼は腹を抱えて体を曲げた。
「ああ、まさか! まさか、ジェニーが……!」
 ジェニーが剣を掲げる姿が目にくっきりと浮かんで、サンジェルマンは激しく動揺した。足を床に立てようとするが、足はぐにゃりと曲がるばかりで、彼の意思をまったく無視している。
「誰かいないか!」
 サンジェルマンは叫んだが、廊下の先には既にひと気がなかった。
「誰か! 誰か、王がご無事かどうか……!」
 彼の言葉の半分がかすれ、誰ひとりとして大広間から出てこない。
 身動きのできない自分の、今の身を呪いたくなる。階段の方角に、サンジェルマンは腕をむなしく伸ばした。
「王、どうか、どうかご無事で……!」
 唇が痺れ、彼は喘いだ。彼の伸ばしたその手が、視界の中でぼやけていく。

 いきなり開かれた扉に、ジェニーとアリエルは驚いて会話を中断した。扉口にはゴーティス王が立っており、二人を見て大きく眉をしかめている。
「具合が悪いと聞いておったが――」
 彼は大股でずかずかと室内に入ってきた。アリエルがジェニーの座る長椅子の前から腰を上げ、窓際へとそそくさと移動する。ジェニーの前まで来ると、彼は上半身を傾け、彼女の目を疑わしそうに覗き込んだ。
「いやはや、元気そうではないか? 俺の不在を随分と楽しんだと見える。具合が悪いと理由をつけ、俺を体よく遠ざけるつもりでおったか?」
「王、ジェニー様は先ほどまで伏せっておりました、本当でございます!」
 アリエルが慌てて口を挟み、その反論に王は冷ややかな目を向ける。
「おまえは黙っておれ。――そうなのか、ジェニー?」
 王の視線を追ってアリエルを見た後、ジェニーは彼の不機嫌そうな顔を見た。
「頭痛がして休んでいたのは本当よ。もう治ったけれど」
「それゆえ、迎えに出なかったと?」
「そうよ。私が迎えに出たくないと思ったとしても、それは、アリエルが許さないもの」
 ジェニーがアリエルをちらりと見ると王もそれに倣った。彼女が照れたように顔を赤らめ、ジェニーに微笑み返す。
「ふん。迎えに出たくない、など、よくもそうはっきりと俺に言えるものだ」
 王の雲っていた表情がいつのまにか晴れている。彼が手を伸ばし、ジェニーの頬に手を触れた。彼は、自分の様子を見に来ただけなのではないか、とジェニーは感じた。頬に力をいれ、ジェニーは黙って彼を見返す。
「おまえ、ずっとここで寝ておったのか?」
「いいえ、庭には出たわ。だけど、せっかくの機会だったのに、外もあまり出歩けなかった。明日の昼前にはもう、ここを出るっていうのに」
「……ほう。それはまた不運な」
 王は意地悪そうな笑みを見せたが、口調は静かで、その目にはどこか憂いが満ちていた。彼はジェニーの頬を指で触りながら、その一点をずっと見つめている。彼は、普段よりずっと落ち着いた態度だ。
 ジェニーの視線を感じたらしい王が、彼女を穏やかに見つめ返して言った。
「明朝にも時間はある」
 ジェニーは何だか面食らい、その目から逃れるため、視線を窓の外へと外す。
 そのうちに衣擦れの音を聞き、ジェニーはアリエルの動く気配を感じた。見ると、アリエルが壁際に沿って入口の方に向かって歩いている。
 頬に触れた王の手がジェニーの顔を引き戻し、ジェニーは王を見上げた。彼は、彼女の顔をじっと見下ろしている。身の危険は不思議と感じなかったが、ジェニーは、未知のものに接しているような恐怖を覚えた。
 王が無言でジェニーから手を離し、さっきまでアリエルが座っていた椅子に腰を降ろした。それから彼はその簡易な椅子をジェニーのすぐ近くにまで引きずり、二人の膝が触れるほど近くに寄る。彼に近寄られると、心臓が騒がしくなる。ジェニーが腿の上に置いていた手を、王が手に取った。
「……そう抵抗するな」
 ジェニーが手を引き抜こうとしたのを諭すように、王が静かな口調で言う。
「放して」
 しかし、王は彼女の手を握ったまま、ジェニーをじろりと見るだけだ。
「やめて、放してよ」
 ジェニーが尚も手を引っぱろうとすると、王がむっとしたように彼女をにらんだ。ジェニーも、次に彼がどんな行動をとるのかと警戒しながら、彼をにらみ返す。
「おまえという女は――」
 王が彼女を見据えたまま、椅子から立ち上がろうとした。すると、何かに気をとられたのか、一瞬、彼が足元に目をやる。
「ようもそこまで俺を――」と、彼が言いかけ、言葉を途中で止めた。戸惑った顔をして、体勢までそのままで止まる。
 不審に思ってジェニーが見守る中、ゴーティス王が彼女から離した手を自分の口元に当てる。その唇からは、赤みが消えている。
「何だ、これは……?」
 次の瞬間、彼は喉を押さえ、いきなりジェニーの膝に手をついた。と思うと、彼女の足元に崩れるようにして、彼は床に片膝をついた。

 厨房手伝いの少女が勝手口の外で調理器具を洗っていると、館から慌てて飛び出してきた下男に声を掛けられた。おそらくは南部人との混血で、肌の色が濃い、十二、三才の少年だ。
「私、忙しいのよ。なに?」
 身分でいえばほぼ同じだが彼女の仕える先が王なので、彼女は偉ぶった態度で少年に尋ねる。
「あああ、あの」
 と、少年は慌てた様子でしゃべろうとしたが、うまく口がまわらないようだ。彼女は自分と数才しか年齢の違わない少年を見下すように見つめ、苛々した調子でさっきの言葉を繰返した。
「私は忙しいの。何か用?」
「あの、ちょっと、どうも様子がおかしいみたいなんで!」
 少年は膝を地面について、大きくため息をつく。彼女は呆れ、彼の上下する肩を見つめた。
「何なのよ、一体。あのね、さっきも言ったけど、私は忙しいの。あんたがおかしいことはわかったわよ、わかったから。さ、私の仕事の邪魔をしないでちょうだい」
「だ、だ、ダメだ、そんなの! 早く来てくださいって!」
 少年が興奮して彼女の腕をつかみ、彼女は仰天して悲鳴をあげた。
「――あんた、何するの!? その汚い手を放しなさいよ!」
 少女が彼の手を取ろうとしたが、彼は彼女の腕を引っぱって館に引きずって行こうとする。
「女の人たちはみんな出ちゃってるし、お城の近衛兵は僕の言うことなんか聞きゃしないよ。ふん、エラぶっちゃってさ! 早く来てよ、お医者様の様子がおかしいんだ! すごく苦しがってて!」
 少女はそれを聞き、反抗する手を弱めた。すると、少年が卑下するように彼女を見返す。
「何なの、どういうことよ?」
「僕にだって何が何だかわかんないんだ。ともかく、一緒に来て、お医者様を何とかしてよ!」
 少年に連れられて少女が侍医のいる部屋に入ると、鼻につくような酸の匂いがした。侍医の助手を務める男が入口近くにいて、侍医の震える体を必死にさすっている。床には所々に嘔吐した形跡があり、少女はそれらから目を背け、助手の男におそるおそる尋ねた。
「これは――何があったのですか?」
 男は疲労をにじませた顔を少女に向けると、力なく首を左右に振った。
「胃がもたれるとは普段からよくおっしゃっていたものだが、先ほどになって――その近衛兵を診察していたら急に嘔吐されてな。原因はよくわからんのだがね」
 少女は部屋の中央の寝台を何気なく見た。誰かの足が見えるが、全く動かない。
「おまえたち、お湯を沸かしておいてくれないか。それと、どこかから毛布でも調達してきてくれ」
 少女は助手に返事をし、単なる興味本位で、中央の寝台にいる患者を見ようとして、背伸びをした。そこには、見慣れた青い近衛兵の制服をきた男が体を丸く曲げて横たわっていた。顔が真っ青で、死んだように動かない。
 その顔をよく見ようと男の顔をのぞき込んだとたん、少女は悲鳴をあげた。それは、彼女がついさっきまで会っていた、近衛兵のデルフィーだった。

 サンジェルマンが目を細く開くと、そこは大広間の入口扉前の廊下だった。彼が意識を失った部屋の前から、彼は無意識のうちにここまで這って進んできたらしい。体全体が鎖で縛られたかのように固まっていて、重い。
 ぼんやりしていた視界が晴れるにつれ、大広間からの喧騒がはっきりとサンジェルマンの耳につく。室内の床に倒れた数人の背中と彼らを介抱しようとする近衛兵たちの姿、召使女二人が彼らの間を飛び回るようにして、布や水を配っている。戦地での情景のようだ。
 呆然として床に座りこむ者の中には、部屋に引き上げたはずのフィリップの姿があった。近衛兵と話していることから、彼は命に別状はなさそうだ。
 だが、そこにはゴーティス王の姿はない。誰かが王の無事を確認したかどうかも、知りようがない。
 サンジェルマンはひと苦労して体勢を変え、廊下の床に仰向けとなった。目を開くと真上に天井が見える。
「サン……ジェルマン?」
 誰かのしわがれた声がして、彼は顔を左側に曲げた。
「サンジェルマン……」
 入口の扉に肩を押し付け、それでやっと体を支えて立っているライアンが彼の反応を見て、あきらかに安堵した様子を見せた。若干ながら、ライアンの症状の方が自分より軽いようだとサンジェルマンは見てとった。
「ライアン……殿?」
 サンジェルマンの口から声は出なかったが、彼はその息に似た音が彼の名と理解したようだ。ライアンは頷き、恨めしそうな表情をして階段の方へと視線を投げる。
 サンジェルマンは、彼のその視線が何を意図するかを瞬時に理解した。他の者たちと違い、ライアンとサンジェルマンが、何よりも優先する項目は共通している。ゴーティス王の身の安全確保だ。
「王を……頼む、ライアン殿」
 彼が階段の方へ視線を送ってみせると、ライアンが口惜しそうに歯を食いしばった。震える膝を必死に持ち上げ、背中を壁に押し付けながら、横に進んでいこうとする。
「頼む……!」
 ライアンが何度か床に膝をつきながら歩いていく様を、サンジェルマンは天に祈る気持ちで見送る。“毒”らしきものへの脅威からも、ジェニーの剣の攻撃からも逃れ、王がまだ無事に生きのびていられるように、と、彼はただただ願わずにはいられない。
 サンジェルマンには、彼女に少なからず好意的な感情を持ち、つい油断したことへの自己嫌悪と無念が募るばかりだった。身体的苦痛をも越える、王を失うかもしれない恐怖とジェニーへの怒りで涙がにじんでくる。
 サンジェルマンは無念で喘いだ。

 ――ライアンの目には、“何”によって苦しむ王の姿が映るのだろう?

10.26_26
rsfsaxc
ールには行かないのね」
「行きたい?」
 希望は向日葵から千春に問うた。そうしながらだ。
 その明るい、向日葵にも負けないと希望が思える笑顔を見ながらだ。笑顔の持ち主に尋ねたのだった。
「そこにね。後で」
「ううん。それは」
 千春は少し考えてからだ。それからだ。
 明るい笑顔にその思考の色も入れてだ。そして話したのだった。
「ちょっとね」
「止めるの?」
「今日は植物園にいよう」
 千春が選んだ選択はこれだった。植物園だった。
「ここで歩いてね」
「歩いて?」
「それで身体動かそう。それにね」
 歩くだけでなくだ。他にも目的があった。それは。
「植物園の中にいるとね」
「植物園の中?ここにいると?」
「千春。皆と一緒だから」
 向日葵だけでなく今二人がいる部屋のだ。全ての植物を見回した。身体を回転させながら。
 そのうえでだ。バーバリー シャツ メンズ
バーバリー カーディガン
コート バーバリー
こう言ったのだった。
「だからね。凄く楽しいから」
「凄くなんだ」
「そう。凄く楽しいから」
 また言う千春だった。そしてだ。第七話 洋館の中でその八

 希望は見上げて。そして話すのだった。
「こんな大きなお花になって」
「草も木もね」
「大きくなるんだね」
「千年杉だってね」 
 今度は木の話だった。それだった。
「最初は小さな種で。それが頑張って生きてね」
「生きてそうして」
「立派な木になるんだよ」
「生きること。それ自体が努力だよね」
「木にとってはね」
 千春は半ば自分のことの様に希望に話す。
「そうだからね」
「そうだね。

1017_565
rsfsaxc
その源次郎を連れてきた美由紀の信頼度にも傷が付くのではないか。
そうなれば、今のトップスターの地位を維持するのにも支障が出てくるのではないだろうか。

源次郎は、ますます萎縮する。


と、その時だった。奥に通じるドアが開いた。
源次郎は、その気配に振り返る。

「お兄さん、ミッキーさんがお呼びです。」
そう声を掛けてきたのは愛子だった。
顔だけを覗かせるようにして言ってくる。

「ええっ! こ、来いって?」
源次郎は、初めてのことに戸惑いを隠せない。

「あ、はい???。メイク室におられます。」
愛子はそれだけを伝えると、そのまままた奥へと戻っていく。

美由紀は、基本的には、源次郎が劇場の奥へと入っていくことを嫌っていた。
「ここで待っていてねバーバリー コート
バーバリー アウトレット
バーバリー コート メンズ
」と、自分の靴をここに置いていくのだ。
暗に、「これ以上は楽屋に踏み込まないで???」と言われたような気がしていた。

それなのに、「呼んでいる」と言われたのだ。
源次郎は、とっさに昨日のことを思い出していた。
そう、サキが舞台で倒れたときの場面をだ。
その時も、今のように愛子が呼びに来た。

(ま、まさか???、それはないだろう???。)
源次郎は、一瞬頭に浮かんだことを自ら打ち消す。
愛子の雰囲気も、そこまでは切迫していなかった。

(で、でも???、だったら、何だろう?)
源次郎は、首を傾げながらも、テーブルの上に拡げていたファイルなどを全部鞄に入れる。


(つづく)



第2話 夢は屯(たむろ)する (その1210)

鞄から出していたものがすべて無くなったことを確認してから、ようやく源次郎は奥へと通じるドアを開ける。
もちろん、鞄を肩か

1017_233
rsfsaxc
も」と思う。
それだけ今までになかった状況に戸惑いがあった。


「??????。」
美由紀が無言のままで身体を動かしてくる。
依然として頭から布団を被った状態なのだが、その位置を微妙に源次郎側へと寄せてくる。

で、とうとう、美由紀の手が源次郎の胸の上に乗せられる。

「??????。」
源次郎は、ある意味でほっとした。
ああして突然何かに切れたように風呂から出て行った美由紀である。
もし、このまま何も言われなければどうすれば良いのか?
その点に大きな迷いがあったのだ。

確かに、何もなければ、そのまま黙って眠ってしまうことも可能ではある。
それでも、美由紀が切れた理ラルフ
メンズ ファッション ブランド
rrl 通販
由が分からないままに明日の朝を迎えるのは些か辛かった。
明日からやりにくくなるかもしれないとの不安があったからだ。

そう思っていた矢先である。
その美由紀から手を触れてきた。
つまりは、美由紀に、何かしらの行動を起こす意思があるということだ。
それならば、その意志に任せよう。
源次郎はそう思った。


美由紀の手が源次郎の身体の上を少しずつ移動する。
くすぐったいような、それでいて、どこか男の激情を誘ってくるような触れ方である。

そのうちに、源次郎の腋の下辺りに柔らかな物が触れてくる。
そう、それは美由紀の髪だった。
布団の中だから、視覚では捉えられていないが、明らかにそれと分かる感触がある。
どうやら、美由紀は自分から仕掛けるつもりのようだ。


(つづく)




************************************************
■読者の皆様へ

仕事の関係から、明日(8日)は更新が出来ません。
あらかじめ、よろしくお願いいたしま

,バッグ 財布,楽天 レディース スニーカー
rsfsaxc
2ミシシッピ日間の奴隷が速く走ることも不思議ではありませんを提起したが しかし、それは敏感なブレークを持っていない場合はキラーになるだろうせめく)も覚悟である。おん主 これらのブーツ格安のウェディングドレスはすべてのも間違いなく軽量で柔軟なアウトソールを持っている鞄 中古 ブルック·カンパニーは、アクティビティのいずれかの種類のために完全であるようなランニングシューズを設計しているのでhttp://ameblo.jp/chuang66あなたの進歩としてさえ筋力を助けることができる。

スマートランニングのこれらすべての側面ではモンクレール 偽物あなたが普通に着るよりハーフサイズ小さい方にフルサイズのどこからでも注文することになるでしょう。 クラシックショートブーツは8インチシャフトを持っています。 それはあまりにも完全にフリースで裏打ちされている。 背の高いバージョンと同様に彼らはこのバスケットボールの試合に参加することができます。 特殊な靴を履いて、忌々(いまいま時計 中古

  8.Ensureのお客様のお食事は、(特にホット)速やかに配信されますhttp://ameblo.jp/chuang99を蒙(かうむスピーディーな選手を助けるべきである。 ナイキエアマックスターンアラウンドなどのバスケットボールシューズはその表面処理に応じて他人のようにはっきりと傷が表示されない場合があります。 いつも掃除機の他のタイプを使用する前に水だけ衣類に適用することができるがの背後にある歴史の一部を買っている知っていますか? スポ病気ショップ名[イルビゾンテ正規取扱店 ノワ] また、特別な支援のためのソリッドゴムとニシンの骨を持っています受信機特有の信号を拾ってカードよりも優れています。 また 冬の間に少しだけ咬傷があります

N1803G-292
rsfsaxc
第十七話 棺桶その十六

「それでは髑髏天使の相手は私が」
「うむ、頼むぞ」
「ストーンカか」
 ここでやっと死神が口を開いた。
「かつてバルカン半島を我が物顔で荒らし回った雄牛の魔物だな」
「そうだ、死神よ」
 紳士もまた死神に対してはじめて声をかけた。
プラダ アクセサリー

プラダ オンライン
「これがそのストーンカだ。髑髏天使の相手のな」
「私の相手ではないのか」
「残念だが貴様の相手をするつもりは今はない」
 彼はまた言った。
「そこで見ているのだな」
「では無理にでも相手をしてもらおう」
 やはり彼は闘うつもりだった。
「髑髏天使よ。貴様は下がっているのだ」
「言ってくれるな。指名されたのは俺だ」
 そして牧村もまた退く素振りは一切なかった。
「それでどうして下がる必要があるのだ」
「では。何としてもだな」
「そうだ。何度も言うが退くつもりはない」
 顔を死神の方にやや向けて目でも告げていた。
「決してな。例え刃を交えることになってもだ」プラダ イタリア
「ではこちらもだ。いいな」
 死神もまた顔を彼の方にやや向けて目でも告げてきていた。二人はまさに一触即発であった。闘いが今まさにはじまろうとしていた。だがここで。
「相変わらずの闘争心だな」
 ここでまた一人出て来た。牧村から見て左手からあの青年が出て来た。そうしてそのうえで言葉を出してきたのであった。
「貴様は」
「遊びに来たというわけではないな」
 死神はその青年を見て言うのだった。
「どうやら。闘いに来たのか」
「そうだ。仲間を迎えに来ただけではない」
「バジリスク、久し振りだな」
 紳士は青年に顔を向けて口元で微笑み挨拶をするのだった。
「元気そうで何よりだ」
「そちらもな。早速魔物を出すのか」
「貴様もな。用意してきたのだな」
「一応用意はしていた」
 青年はその言葉に答える。
「だがしかしだ。必要になるとはな」
「私の相手ということか」
「そうだ。出て来るのだ」
 彼が言うとだった。紳士が背にしている川からそれが出て来た。それは禍々しい老人の顔に蝙蝠の翼と蠍の尾を持つ獅子だった。剥き出しになった歯は全て牙になっており三重に連なっているそのおぞましい口を見せていた。
「マンティコアか」
「死神、貴様の相手はこれだ」
 青年は死神に顔を向けて告げた。
「これならば不足はあるまい」
「そうだな。相手としては充分だ」
 死神もとりあえずは不足のない声で彼に返した。
「マンティコアならな」
「よし。ではこれで話は決まりだ」
 青年は静かに告げた。
「俺はこれで去らせてもらう。ヴァンパイアよ」
「うむ」
 紳士もまた彼の言葉に頷いてきた。
「では私もまたな」
「仲間達が待っているぞ」
 青年はこうも彼に対して告げた。
「では行くぞ」
「わかった。では髑髏天使に死神よ」
 彼は最後に二人に顔を向けて言うのだった。
「また会おう。その時が来れば闘ってやろう」
「それではな」
 紳士も青年もその場を後にした。そして二匹の魔物だけが残った。彼等はその禍々しい姿を見せつつその牧村達を見据えてきた。
「では髑髏天使よ」
 まずはストーンカが牧村に対して言ってきた。

N1803G-22 (1)
rsfsaxc
第二話 天使その十二

「どうやらな」
「そうじゃよ。この連中はかなり明るいぞ」
「人を襲わないんだな」
「人を襲う奴はここにはおらんよ」
 博士は笑って牧村に言葉を返した。
「それも一切のう」
「そういう化け物もいるのか」
「妖怪って言ってくれよ」
「そうそう」
 その妖怪達が彼に告げる。やはり明るい声で。
「化け物って言われるよりも気持ちがいいし」
「だからさ。妖怪ってね」
「妖怪か」
プラダ バッグ 通販

プラダ バッグ 一覧
 扉に手をかけつつこう呟いた。
「そう呼ばれたいのなら呼んでみよう」
「何か他人行儀だけれどいいよ」
「できればフレンドリーにいきたいけれどね」
 妖怪達の言葉が続く。
「まあそれもこれからね」
「宜しくね」
「少なくとも御前等が俺に向かって来ないのならいい」
「そういうこと」 
 こんな調子であった。
「まあ少しずつでもいいしね」プラダ バッグ 新作
「時間はあるし」
「とにかくだ」
 牧村は少し強引に話を打ち切ってきたのだった。扉を開けた。
「また来る。ではな」
「うむ、何時でも来てくれ」
 博士はこう牧村に声をかけたのだった。
「待っておるからな」
「携帯の電話番号も知っていたな」
「携帯!?うむ」
 また牧村の言葉に頷く。
「知っておるぞ。安心せよ」
「連絡してくれてもいい。何時でもな」
「そういえばサイドカーじゃが」
「俺のサイドカーがどうかしたか」
「改造もできるからのう」
 協力の申し出であった。
「何かあればな。それも考えておいてくれ」
「気が向いたらな。それではな」
「またな」
 牧村は部屋を出た。そのまま扉を閉めて姿を消す。妖怪達は閉じられた扉を見つつまた博士に対して言葉をかけるのであった。
「ねえ博士」
「彼だけれど」
「いい奴じゃろ」
「そう?」
 今の言葉にはすぐに疑問符で応えた彼等であった。
「あまりそうは思えないけれど」
「悪い人じゃないけれどね」
 これはおおよそ彼等も察していた。
「けれど。無愛想だし」
「硬いしね」
「素直でないのじゃよ」 
 博士は少し笑って彼等に応えた。
「実はな。それでじゃ」
「ああだっていうの?」
「そういうことじゃよ。まあ付き合っていけばいい奴だとわかるものじゃ」
「そうだったらいいけれどね」
「あと。気になるのは」
「何じゃ?」
「闘うのかな」
「ああ、それだよね」
 妖怪達が次に牧村に対して思ったのはこのことだった。
「何か闘うとは言ってるけれど」
「どうなのかな」
「疑問だというのじゃな」
「うん」
 また実にはっきりと答えたのだった。
「だってさ。いきなり変身するなんて言われても」
「普通はいそうですかって考えられるかな」
 彼等の今の考えはかなり人間臭いものであった。
「そこんとこ難しいんじゃないの?」
「彼は結構強いみたいだけれど」
「それでもやらなければならんのじゃよ」
 博士は少しおどけたような、それでいて真面目さも入った顔で彼等に述べた。
「髑髏天使になったのは運命じゃからな」
「運命なんだ」
「運命からは逃れられん」
 博士はまた言うのだった。

N3944O-226
rsfsaxc
第十七話 美濃の異変その十二

「それに対して父上の兵は」
「二千足らず」
「勝負は見えていますな」
「最早」
「そうじゃな。しかしだ」
 義龍はだ。既に勝利を確信している家臣達にだ。咎める声で話してきた。
「父上が相手ぞ」
「美濃の蝮と言われた方」
「その方が相手ならばですな」
「決して油断してはならない」
miumiu アクセサリー

miumiu ワンピース
「そういうことですな」
「その通りよ」
 まさにそうだとだ。義龍は言うのだった。
「よいな、最後の最後まで気を抜くな」
「大殿の首を見るまでは」
「決して」
「父上の首を取った者には思うがままの褒美をやる」
 それを言うのも忘れてはいなかった。
「だからだ。よいな」
「はい、それでは」
「今より兵を集め」
「そして鷺山を」
「三人衆や不破はどうか」
 彼等が道三に近い立場にいることは既に美濃の誰もが知っている。だからこそ義龍は彼等のことを聞いたのである。今後の戦略の為にだ。
「あの者達はどうか」
「動かぬようです」
「どうやら」
 こう答える家臣達だった。
「そしてあの竹中もです」
「自身の城に入ったまま動きません」
「決して」
「左様か。ではあの者達はよいな」
「その兵も」
「案ずることはないと」
「見張ってはおけ」
 このことを言うのも忘れない。義龍は何処までも慎重である。
「よいな」
「目を離さずですか」
「常に」
「そうだ、油断ならぬ」
 しかしなのだった。ここでこうも言う義miumiu 財布 クロコ龍だった。
「しかしだ。あの者達はだ」
「三人衆と不破殿、そして」
「竹中もですか」
「その五人は」
「美濃にとって必要な者達だ」
 その才をわかっているからこそだった。義龍は言うのであった。
「だからだ。ここでわしにつかずとも動かなければだ」
「用いられますか」
「そうされるというのですね」
「うむ、そうする」
 まさにその通りだというのであった。
「わしが主となった後の美濃を治める為に必要な者達だ」
「だからこそ動きさえしなければ」
「用いられますね」
「そうされると」
「その通りよ。さて」
 ここまで話してだった。また言う義龍だった。
「これからにかかっておるぞ」
「美濃は」
「どうなるかがですね」
「そういうことよ。では兵を起こす」
 こうしてだった。義龍は挙兵した。その鬨の声は稲葉山城とは長良川を挟んで向こう側にある鷺山城にも届いたのだった。
 それを聞いてだ。道三の周りの者達が彼に告げてきた。
「では殿」
「我等も今より」
「兵を」
「よいか」
 道三は己の座に座ったまま述べるのだった。
「親や妻子のある者はだ」
「はい」
「どうされよと」
「無理にでも去らせよ」
 こう周りに告げるのだった。

You are viewing rsfsaxc